時間栄養学とは?
「体内時計」というように、私たちの身体には時間とともに変化するリズムがあります。
体内時計と食事の関わりも密接で、同じものを同じ量食べても、食べるタイミングによってその影響の度合いが変わってくることが明らかとなってきました。
そこで、「何を」「どれくらい」食べるとどのような影響があるかという基本の栄養学に、「いつ」をプラスしたのが「時間栄養学」です。
体内時計は健康を保つために欠くことができません。
「時間栄養学」を意識して、より効果的に健康を目指しましょう!
時刻合わせは朝食で。
体内時計は、脳にある「親時計」と、内臓や筋肉などにある「子時計」の2つの機能から成り立っており、1日で約24.5時間のリズムを刻んでいます。
そのため、24時間の生活に合わせるには毎日、リセット(時刻合わせ)することが大切です。
親時計は朝の光でリセット(時刻合わせ)され、子時計は食事や運動、身体活動でリセットされます。
また、体内時計のリセット機能は1日にとる3食のうち絶食時間が長かった後の食事(朝食)で一番高まるので、前日の夕食から翌日の朝食まで十分な時間を空けることが大切です。
朝食には健康なリズムをつくる力がある!
体内時計が整うと、太りにくい身体になることが明らかになってきました。
三基総合研究所が行ったマウスを対象とした実験でも、朝食を食べなかったマウスは食べたマウスに比べ、足の筋重量が低下し、体重増加が進みました。さらに、エネルギー代謝を行う肝臓や筋肉の子時計が遅れてしまっていることもわかりました。
これらから、朝食が筋肉低下や肥満を招かないリズムの整った生活を送る鍵となっていると言えます。
<参考>Br J Nutr. 2022 Mar 11;1-26
朝のたんぱく質が身体を変える⁈
①朝のたんぱくは、昼のハッピーと夜の睡眠のもと
体内時計はホルモンの働きによっても影響を受けます。
例えば夜になると眠くなるのは、脈拍や体温、血圧などを低下させる“眠りのホルモン”であるメラトニンの分泌が夕方から夜にかけて増えるから。
このメラトニンをきちんと分泌するために必要なのが、朝の光とたんぱく質です。
まず、朝の光が目に入ると約14時間後にメラトニンの分泌が始まるようタイマーがセットされます。メラトニンの材料となるのがトリプトファンというたんぱく質に含まれるアミノ酸。朝ごはんにしっかりたんぱく質をとることで、材料をきちんと確保できます。
さらに、トリプトファンは“眠りのホルモン”になる前に、“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの材料にもなります。
つまり、朝のたんぱく質は日中の元気と夜の眠りに大切なホルモンに変化するのです。
②筋肉維持も朝のたんぱくから
健康な人を対象に、たんぱく質を朝昼夜30gずつ食べるグループと、朝10g・昼15g・夜65g食べるグループに分けたところ、
3食(朝昼夜)均等にたんぱく質を食べたグループの方が筋肉の合成速度が速いことがわかりました。
<参考>J. Nutr. 144(6), 876-880, 2014、りぷる125号
たんぱく質は筋肉の材料となります。
筋肉は常に[つくる⇔壊す]を繰り返していているため、材料となるたんぱく質が長時間不足すると、つくる量が壊される量に追いつかなくなり筋肉量が減ってしまうことに。
特に前の食事から時間が空く朝食には、しっかりとたんぱく質をとりましょう。
③食材は「大豆」がおすすめ!
たんぱく質を多く含む食品は、肉、魚、卵などいろいろありますが、朝は断然大豆がおすすめです。
マウスを対象とした実験で、大豆たんぱくを朝に与えるグループと、夜に与えるグループに分け、腸内フローラ(腸内細菌の種類)の状態を比較したところ、朝に大豆たんぱくを食べたグループでは腸内細菌の多様性が高まり、より好ましい状態になっていました。
さらに、腸内細菌がつくり出す有用物質(短鎖脂肪酸)の量も多くなっていました。
このことから、朝食に大豆を摂取すると、たんぱく質がとれるだけでなく、腸内環境を整えるのにも大きなメリットがありそうです。
<参考>Nutrients 12(1), 87, 2019、りぷる125号